稲の作り方,育苗編

稲作りは種籾の選別から始まります。1粒のお米が約3000粒、茶碗1杯分になります。選別は塩水を使って行います(選別の方法は他に硫安を使った硫安選、粘土(泥)を使った泥水選などもあります)。水10リットルに塩2.5kgを溶かして塩水を作り、密度を1.13g/cmにします。比重を計るには、比重計があると便利ですが、ない場合は生卵を利用して比重を調整します。卵が垂直に立って浮くと比重1.10、約55度傾斜で比重1.13,横になると比重1.15以上といった具合で調整をします。一般に種籾の比重は、うるち米は1.13,もち米は1.10が標準になっています。より充実した種籾を選別したければ比重を重くすればいいですし、種籾を多く残したいと思えば比重を少し軽くすればいいでしょう。私の場合、ミルキークイーンというもち米に少し近い低アミロース米を作っているので、比重を1.13より少し軽めにして選別しています。

塩水の中に種籾を入れ(1~2分)浮いた籾、中間に漂っている籾はすくい取り、底に沈んだ中身の充実した種籾を使います。

過去により良い種籾のみを種まきに使いたいと思い、比重を少し重めにした塩水に種籾を入れたら、用意した種籾の3分の2近くが浮いてしまい、これでは籾が足らないと思い、浮いた籾をもう1度比重を軽くした塩水、又は真水で選別をやり直した事もありました。

塩水選が終わったら真水できれいに洗い、温湯消毒をします。60℃のお湯に5分種籾を入れます。60°Cのお湯に種籾を入れる時、冷えた状態で入れるとお湯の温度が下がってしまうので、入れる前にシャワーのお湯で種籾を温めたり、用意するお湯の温度を60°Cより高めのものを用意する、熱いお湯をヤカンに用意して種籾を入れた後、温度を60°Cに保てるようにお湯を入れて調整するなどして温度を5分キープします。温湯消毒が終わったらすぐ冷水に入れて冷やします。

消毒が終わったら浸種をします。水に浸ける事で眠っている種籾の芽を覚ましてやります。1日1回は水を取り替え、水から出して酸素を与えます。一般に芽が出るのにかかる時間は水の温度と日数を掛けた値(積算時間)が100℃といわれています。例えば、10°Cの水なら10日、20°Cの水なら5日というわけです。だだこの積算温度も品種によって多少の違いがあるようなので、穂発芽しやすいか、しにくいかで浸種の日数も変わってきます。私の場合、浸種だけである程度芽を出したいと思っているので、浸種は長くやっています。

 

浸種で全部芽が出ればいいのですが、なかなかそうはいきません。そこで一晩、風呂の中にコンテナを置き、その上に種籾をのせて一晩保温します。浸種をした種籾は水分を吸ってはと胸状態になり、芽が1mmほど出れば芽出し(催芽)完了です。

次に種まきです。苗箱に土を入れ、かき取り板で平らにした後、苗箱に60~80g種をまきます。中苗~成苗にしたい場合の播種量はこれぐらいになります。稚苗にしたい場合は140~200g、中苗にしたい場合は90~130g、成苗にしたい場合は80g以下が目安になります。種まきは機械を使わず、手でまいています。潅水は種をまく前、まいた後どちらでもいいかと思います(私はまいた後にしています)。1反当たりに用意する苗箱の枚数は20~25枚、手で植えるのか?それとも田植機で植えるのか?植え付け本数を何本にするのか?条間、株間をどれぐらいにするのか?によって用意する苗箱の枚数を決めます。

種まきをした後、土を被せます。覆土をする時の注意点ですが、土を厚く被せないことです。種籾が隠れる程度の薄さで覆土をします。土を厚く被せると芽が出てこなくなりますので、種籾が多少見えてもいいぐらいの気持ちで土を被せます。あと、覆土をした後に潅水はしないようにしましょう。覆土をした後に潅水すると、土が固まってしまい、芽が出にくくなります。

種をまいて土を被せた後、苗床に並べシルバーポリを被せます。育苗の方法は幾通りもありますが、主として箱育苗して機械で植える方法と、直接地面に種をまき、苗取りをして手で植える方法があります。箱育苗では、箱を並べる場所を水田にする「水苗代」、畑で行う「畑苗代」、その中間で、水田で水を落として育苗する「折衷苗代」、「ビニールプール」といった苗代があります。私の場合、「ビニールプール」の苗代のプール育苗で苗を育てています。プール育苗のいい所は自宅のちょっとしたスペースで育苗が出来、手近な場所で世話が出来る所です(マンションのベランダで育苗している人もいたりします)。

 

家に置けない苗箱は田んぼで苗代を作り、保温折衷苗代で育てています。

播種してから4日ぐらいで芽が出てきました。最初に鞘葉(土中で発芽した芽が地上に出る最初の葉)という黄白色の幼葉が出ます。1cmぐらいになったらシルバーポリを取ります。シルバーポリの取るのが遅れ鞘葉が伸びすぎると徒長苗になるので注意します。

播種してから7日ぐらいで鞘葉が緑化しました。

播種後15日ほどで1葉まで生長しました。

播種後20日ほどで2葉まで生長し、3葉が出てきています。
草丈8~10cmくらいまで成長しています。この頃は籾の養分(胚乳)だけで成長しています。

播種後30日ほどで3葉まで生長し、4葉が出てきています。
現在の状態で稚苗から中苗に生長していく途中です。

この頃になると籾の養分(胚乳)を消費し尽し、根から養分を吸収して生長していきます。

草丈10~12cm位になっています。

播種後37日ほどで4葉まで生長しています。。草丈14~18cm位になっています。この頃の苗になると1葉から分けつが出てくるものもあります。

稲の葉は、右側と左側に交互に順序よく出ます。
緑の葉が3枚出ると、4枚目の葉が出ると同時に一番下の葉の付け根の節から枝分かれして、新しい茎が出ます。
同時に新しい根も出ます。次も同じように、葉が3枚出るごとに枝分かれし、新しい茎が出ます。
これを分けつといいます。

田植え前の苗、播種後40日位、4葉まで生長し、5葉が出てきて、分けつもしています。立派な中苗になりました。